庭の足元に触れて
夜の気配がわずかに忍び寄る頃、薄く靄が庭を包んでいる。草の葉先はまだ冷たさを残し、指先で軽く撫でると小さな水滴が微かに揺れた。踏みしめる土は硬くも軟くもなく、まるで記憶の端にあるような感触を届かせてくる。時折、風が颯と通り抜けて、掻き乱された葉のざわめきが響いて水面を打つ小さな波紋のように耳をくすぐった。
風の声と髪をなでる感触
風は強くなく、だがただ静かなわけでもない。肌の上で細い風がそっと髪を揺らし、小さな粒の空気を連れてくる。匂いは湿った土と青みのある草の匂いが混じり合い、じっとしていると時折胸の奥まで届く。身体の横で柔らかな葉が擦れ、目の端にちらちらと動く影が見えた。
ひと呼吸置いて見つめる庭の細部
まばらに伸びる草の影の中に、小さな虫がもぞもぞと動いていて、あまりに微細なその存在をじっと見つめ続ける。うっすらと湿った空気と暮れ色に混ざって、いつのまにか時間の感覚が薄れ、立ち続けた脚の重みさえ遠くに感じるようだった。身体の中に潜んだ小さなさざ波をおさえながら、庭の静かな風景がゆっくり解けていく。
