湿った草に触れる指先
ぱらぱらと細かな雨粒が止んだばかりの草むらの中で、手のひらに吸い付くような湿気を感じている。ひと束の草の葉先を選び、指先でそっと撫でる。冷たさが皮膚を伝い、内側のざわりとした感覚が呼応する。
辺りは薄い霧雨が残る湿度の中、薄緑色の穂先にはまだ小さな水滴が揺れていた。足元の土も粘るような湿り気をはらみ、歩みを止める理由がそこにある。
耳元の微かな草の音
静かすぎるほど静かだが、わずかな草の擦れる音が耳をくすぐる。時折風が吹いて、揺れる茎が小さなささやきを奏でる。呼吸とともに胸の高さまで湿った空気が入り込み、皮膚のひとすじを走り抜けていく。
その場に立ち尽くしている内に、身体の微細な反応と草の存在が織り重なり、少しだけ形のないものが濃くなっていく。見えるもの、触れるもの、聞こえるものがじっと波打っている。
足元の息づきと身体の距離
視線を落とすと、隅々まで濡れた葉が、形や色を変えて重なっている。触れた草の感触が肌に残り、動きを止めたまま腕の力が抜けていく。傍らの湿った土の匂いは、どこか遠い日々を思い起こさせ、胸の奥でぴたりと音を立てた。
ふと息を吐いてみると、手のひらの湿り気に繋がったまま、妙な静けさが身体の中に広がっていくのがわかる。誰かに言葉にできない何かをそっと預けているような、そんな距離だ。
