むかしの印刷物に触れながら朝の静けさに

朝の光が差し込む書斎で古い印刷物を手に取る

朝の霞の中くるくると

扉の隙間から、湿った空気とともに薄暗い曇り空がさりげなく部屋に入り込んでくる。机の上には古びた印刷物たちが並んでいる。手に取れば、紙の手触りがほんのり冷たく、少しざらついているのがわかる。その重みを感じながらページをひらくと、インクの匂いとは違うけれど、かすかな歴史がにじみ出ているようで、指先がすこし震えてしまう。

静かな時間に広がる印刷の世界

この朝の空気に、印刷博物館が千葉県立美術館で開催されることを思い出す。昔の技術を辿り、ひとつひとつの工夫や手間を想像した。色や文字の配置、紙の質感までもが時代の名残を伝える。ぼんやりした曇りの日の朝、ずっとタイムスリップしているように、ただゆっくりとめくりながら目が定まっていく感じがある。

新聞やスマホの画面とはまるで違う、物理的に存在する重みというのはこんなにも心地よく、曖昧だった感覚をすっと形にしてくれるものだ。じっと繰り返し視線を走らせて、知らず知らず息を整える。紙面の境界で感じる温度差が指先にあるのに気づいて、手を休める。でもまたつい次のページをひらきたくなる誘惑に駆られもする。そういう繰り返しに包まれながら、時間がすこしずつ満ちていく。

季節を閉じ込めた朝の一瞬

風はそよそよと窓の外で揺れ、何度かカーテンが動いた。夏の陽気へ向かっている五月の曇天は、午前の静けさとよく合う。冷たい空気ながら湿度は高めで、肌にじっとりと優しく触れてくる。頭のどこかに残る昨日の雑念を、ゆるりと流してくれるように感じながら、手元の古い文字や挿絵を追っていた。やっぱりこの時間だけが持っている特別な色合いを、忘れずにおきたいと思うのだった。