朝の商店街で開く八百屋のシャッター

朝の商店街で開きかけの八百屋のシャッターとトマトの箱

シャッターが上がる音

商店街の入り口で足が止まった。八百屋のシャッターが半分まで上がったところで、ガラガラという音が途切れた。店の中から段ボールを運ぶ音が聞こえてくる。

トマトの箱が店先に積まれていく。赤い実がビニール越しに光っている。店主の手が箱の角を掴むたび、段ボールがかすかに凹む。その手つきを見ていると、自分の指先に昨日の疲れがまだ残っていることに気づく。

向かいの花屋はまだ閉まっている。アスファルトに朝の光が斜めに落ちて、シャッターの影が長く伸びている。この時間の商店街は、まだ誰のものでもない。

段ボールの匂い

八百屋の前を通ると、新しい段ボールの匂いがした。野菜の土っぽい匂いと混じって、朝の空気を重くしている。店主がもう一度奥に消えた。

トマトの箱の横に、キャベツの山ができつつある。外側の葉が少し開いて、朝露が光っているように見えたが、触ってみると乾いていた。指先に葉脈の感触だけが残る。

隣の魚屋も準備を始めたらしい。氷を砕く音が響いてくる。商店街の朝は、こうやって少しずつ形を作っていく。

開店前の静けさ

八百屋の店主が値札を書いている。マジックペンが紙の上を滑る音が、妙にはっきり聞こえる。トマト一袋二百八十円。文字が少し右に傾いている。

ポケットの中で携帯が震えた。取り出さずに、そのまま立っていた。店主が顔を上げて、こちらを見た。目が合いそうになって、視線を逸らした。

シャッターが完全に上がった。店の奥まで光が届いて、並んだ野菜が全部見える。あなたも朝の買い物に来たことがあるだろうか。まだ誰も触っていない野菜を最初に選ぶときの、あの小さな特権のような感覚を。

商店街の向こうから、自転車のブレーキ音が聞こえてきた。