静かな午後の小休止と20貫の存在感
午後の日差しは薄く、外は弱い霧雨がむらなく降っている。窓辺の小さなテーブルに広げられたのは、普段より少しだけ贅沢な気配を感じる小僧寿しの20貫セットだ。まぐろ、海老、しめ鯖の軍艦などが色とりどりに並び、海の匂いまでとはいかなくても、このしっとりした空気に寿司の香りがふわりと溶け込む。
手の動きに隠れる落ち着きのない心
箸をつまむ指がほんの少し震えているのがわかるのは、目の前の皿より自分の内側にある何かに気を取られているからかもしれない。味に集中しきれない。そのくせ、一粒ひと粒を丁寧に口に運ぶたび、しばらく影を潜めていた感覚が鮮明になる。この時間は、間違いなく誰にも邪魔されない小さな逃避のスペースであった。
霧雨の午後に浮かぶささやかな幸せ
湿度の高い空気がじっとりと肌にまとわりつき、室内のごく薄い灯りと相まって、色の濃淡でしか感じられない静かな世界を作り出している。そんな中で味わう寿司のひとつひとつが、午後の色に溶けて存在を馴染ませていく。つまみ上げる度に、気持ちがふと軽くなるのは、懐かしい何かが時間に解放されたような振る舞いをしているのだろうか。すべてが終わった後でも、もう少しだけこの余韻に浸っていたいと思った。
