薄霧と湿り気の歩道にて

薄霧が立ちこめる午後の東京の歩道、濡れたタイルと見え隠れする人の足元

濡れたタイルのひとしずく

じっとりとした空気が肌にまとわりつく午後の歩道。時折すり抜ける靴音が、乾いた音ではなく、湿った石畳の柔らかな響きを携えている。足元のタイルは昨日の雨の名残か、まだずっと乾ききれてはいない。小さな水滴が寄り集まり、陽の光に淡く輝いているのと見間違うほどの煌めきがある。

揺れる傘と交す視線のかけら

薄く霧が立ちこめた空気の中、誰かの傘がわずかに揺れ、歩道の脇でかすかな影を伸ばしている。傘に触れそうな距離で行き違うとき、目だけが一瞬、窺い見るように合うが、すぐに離れていく。意図もなく交わされた小さなかけらが空中で揺れて、消えた。

静かな街角にひそむ気配

小さなカフェの前。アルミ製の椅子の背の凹みを指でなぞると、ちょっとした冷たさが手のひらに伝わった。霧の中でほんのり湿っている。周囲の景色は静かに揺れ、時おり遠くでバイクのエンジン音が滑り込む。体のどこかがそわそわと震え、でもその場から動けずにいる。