午後の陸橋で手すりに触れて

午後の陸橋の手すりと階段、街を見下ろす風景

錆びた手すりの温度

陸橋の手すりに手を置くと、思ったより温かかった。午後の曇り空の下でも、金属はじんわりと熱を持っている。塗装が剥がれかけた部分に指が触れて、ざらりとした感触が伝わってくる。

階段を上がってきたときの息がまだ整わないまま、立ち止まった。下を流れる車の音が、足元から振動として伝わってくる。トラックが通るたび、陸橋全体がかすかに揺れる。

手すりの向こう側、歩道を行く人たちが小さく見える。信号待ちで止まった車の屋根が、曇り空の光を鈍く反射している。排気ガスの匂いが風に乗って上がってきた。

階段の隅に置かれたもの

陸橋の階段の隅に、誰かの忘れ物だろうか、小さな紙袋が置かれていた。コンビニの袋で、中身は見えない。手を伸ばそうとして、やめた。

袋の取っ手が風でかすかに揺れている。誰かがここに置いて、そのまま忘れていったのか。それとも、わざと置いていったのか。

手すりを握り直す。塗装の剥がれた部分が、手のひらにざらざらと食い込んでくる。視線は紙袋から離れない。中に何が入っているのか、知りたいような、知りたくないような。

階段を降りる人の足音が近づいてきて、通り過ぎていく。紙袋はそのまま、階段の隅に置かれている。

振動の中で

もう一度手すりに体重を預けた。下を通る車の振動が、手のひらから腕へ、そして体全体に伝わってくる。目を閉じると、その振動だけが残る。

風が強くなってきた。髪が顔にかかって、手で押さえる。そのとき、階段の隅の紙袋が、風でころりと転がった。中から小さな音がした。

何か硬いものが入っているらしい。でも、それが何なのかは分からない。手すりから手を離して、階段を降り始める。一段、また一段と。

振り返ると、紙袋はまた元の場所に戻っていた。風が止んだのか、もう動かない。陸橋の上に、誰もいなくなった。