信号待ちに見つけた小さな記憶

曇り空の街中の横断歩道で信号待ちをする足元と水たまりの様子

信号の前に立つ足元

午後の空は淡く曇り、わずかに霧雨が頬を撫でている。足元に目を落とすと、小さな水たまりがいくつも点在し、うっすらと建物の影を映している。まだ緑を残す落ち葉がひとしずくの雨に濡れて、辺りの空気に溶け込むように横たわっていた。靴の側面に溜まった雨粒が、少しずつ落ちては路面にリズムを描く。

細かな振動と音の中で

信号の音が遠くから響いてくる。だが指先はポケットの中で静かに揺れ、曖昧な雨音の合間に交差点を渡る人の足音が混ざる。近くの自販機のボタンが押された瞬間の小さな電子音が冷たく響いて、書類の角のように折り込まれた時間に折れ目がついたかのようだった。息を吐くと、湿った空気が穏やかに胸を満たす。

見逃しがちな日常の一コマ

次の信号が青に変わるまで、景色に紛れた小さな変化を探し続ける。舗道のタイルの色がわずかに違う一枚、寄り添うように落ちた二枚の葉の重なり。誰かの履き古した靴の跡が水面に映りながら揺れて、見慣れた街の断片がぼんやりと溶け出す。そんなひとときだけ、自分だけがここに立ち、時間が崩れずに積もっていく気配を感じていた。