静かな蒸気の揺らぎ
窓の外はまだ弱い霧雨が降り続き、湿った空気が部屋の隅にうっすら滞っている。照明は弱く、薄暗いキッチンのテーブルに小ぶりの電気圧力鍋が置かれている。カチッと音が響き、その後しばらく小さな蒸気が湯気となって立ちのぼった。いつの間にか、手間なく食事の準備が整いつつあることを告げていた。
ほったらかしの妙
ふいに手を止め、鍋の表面を伝う冷たい素材感に触れると、どこか無意識に頼ってしまう自分がいるのに気づく。体の内側でざわつくものを誤魔化すかのように、便利さの恩恵に身をゆだねている。電気圧力鍋が奏でる静かな音は、外の細かな雨音と重なり合って、妙な安心感をもたらしていた。
曇り空とともに溶ける時間
立ち上る湯気に視線を落とし、窓外の曇天にうつる家並みをぼんやり眺める。変わらぬ日常の一幕のはずなのに、どこか掴みどころのない揺らぎが内側を通り抜けていく。まるでこの小さな調理器具が、目に見えない気持ちの奥を代弁しているようだった。
