静かな薄霧の午後とロケットの知らせ
窓の外、いつもより少し霞む空が広がっている。忠実に揺れるカーテンの端が、湿気を含んだ空気をやわらかく告げているように見える。そんなささやかな気配のなか、ラジオから大きな声でロケットの打ち上げが間もなく始まるという知らせが流れた。種子島の宇宙センターからH3ロケット6号機の打ち上げだと聞くと、地上の静けさから遠い宇宙の大きな挑戦を思わずにいられない。
午前から続く緩やかな息づかい
手元の本を閉じて、ふと天井を見上げる。部屋の角に集まる少しばかりの影は、一日のなかでいつも違っていて、それがまるでこの場所の息づかいのように感じられる。湿度が67パーセントと聞き、窓の外の空気がしっとりと肌をなぞる感触を思い出す。息をつめるような緊張感はない。だが、どこか心が離れそうで離れない、そんな細い綱渡りが続く午後だ。
目に見えない軌道への祈り
カレンダーの隅には薄く書き込まれたこの日の出来事。ロケットが無事に軌道に到達できますように、と胸の中で繰り返す。目の前には何も見えなくとも、彼方で確かに起きている光景の一部になりたい気持ちが、静かに体を揺らす。ガラス越しの景色は、行く先を見つめる視線の延長にある。
今日の午後がいつのまにか、大きな進歩の始まりになると誰もが静かに願っているのかもしれない。そんな午後の光景に、無意識に背中を押されながら僕はただここにいる。風に揺れるカーテンも、隣の机の上で静かに呼吸するようだ。
