霧に溶ける赤い自転車
いつのまにか空は薄い霧に包まれ、街灯の柔らかな灯が淡く揺れている。視線はふと、ひっそりと立てかけられた赤い自転車に留まった。錆びたチェーンがほんの少し光を映している。足元の濡れたアスファルトには、自転車の軸から伸びる細い影がぼんやりと揺れている。
そばに佇む小さな影
その隣には、小さな黒い犬の影が見えた。姿は見えず、ただ無音の気配だけが横たわる。風は当たらず、霧が静かに溶け込む空間に、影だけが孤独を帯びて漂っている。誰かを待っているのか、それともただここにいるのか、その輪郭は掴めなかった。
見知らぬ街角の記憶
遠くの車道を通る車の音が次第に遠ざかるなか、急に視線が落ち着きなく動き、知らない足元のひんやりした感触に気付く。忙しなく過ぎる時間が風景の奥へ沈んでいくようだった。霧雨の匂いはせず、湿度が肌にかすかに触れる。ただ立ち止まり、赤い自転車と小さな影がいる景色を眺める自分がいた。
