窓ガラスのひんやりとした感触
車窓に手のひらを置くと、ガラス越しに外の温度が伝わってくる。夕暮れの光が斜めに差し込んで、指の影が座席の肘掛けに落ちている。
隣の席から缶ビールを開ける音がして、プシュッという音のあとに麦の匂いが漂ってきた。通路側の席の人も、小さくため息をついて背もたれに深く体を預けている。
窓の外では、田んぼと住宅地が交互に現れては消えていく。電柱の影が長く伸びて、民家の屋根瓦がオレンジ色に染まっている。時々、踏切の遮断機が下りているのが見えて、待っている車の列がすぐに視界から消える。
座席の微振動と重たいまぶた
肘掛けから伝わる細かい振動が、腕を通って肩まで届く。目を閉じると、振動がもっとはっきりと感じられる。でも完全には閉じきれなくて、薄目のまま窓の外を見ている。
前の座席のポケットから、誰かが置き忘れたらしい新聞の端が見えている。車内販売のワゴンが通路を通るたび、缶やペットボトルがカタカタと音を立てる。その音が遠ざかっていくのを聞きながら、また窓に視線を戻す。
トンネルに入ると、窓ガラスに車内の様子が映り込む。自分の顔も見えるけれど、すぐに目をそらして、また外の景色が戻ってくるのを待つ。
靴の中で丸めた足の指
靴の中で足の指を何度も握ったり開いたりしている。靴下が少し湿っているような気がして、かかとを浮かせてみる。でもすぐに元の位置に戻してしまう。
車内アナウンスが流れて、次の停車駅を告げている。でも降りるのはまだ先だ。ペットボトルの水を一口飲んで、キャップを締める手が少し震えている。アルコールのせいか、疲れのせいか、自分でもよくわからない。
窓に置いた手のひらに、自分の息が白く曇りを作る。それをそのままにして、また流れていく景色を見ている。どこかの駅のホームに、傘を持った人が立っているのが一瞬見えた。でも今日は雨じゃない。きっと忘れ物だろう。
