明け方の荷物確認と指先の震え

明け方の玄関に置かれたスーツケースと出張用の荷物

玄関先のスーツケース

明け方の玄関に、開いたままのスーツケースが横たわっている。中身を何度も確認したはずなのに、また手を伸ばしてしまう。シャツの襟元を指でなぞり、畳み方を確かめる。眠れなかった夜の名残が、まぶたの奥に重く残っている。

ファスナーを開ける音が、静まり返った家の中に響く。隣の部屋から誰かの寝息が漏れてくる。その音を聞きながら、充電器をポケットから取り出し、また戻す。同じ動作を繰り返している自分に気づいて、手を止める。

書類の束と冷たい床

膝をついて、書類の束を確認する。玄関の床がひんやりと冷たい。プレゼン資料の角が少し折れている。指先で丁寧に伸ばそうとするが、震えているのか、うまくいかない。

立ち上がると、視界が一瞬揺れる。壁に手をついて体を支える。時計を見ようとして、やめる。まだ暗い窓の外を見つめていると、遠くで新聞配達のバイクの音が聞こえてくる。

スーツケースのハンドルを握る。手のひらに汗がにじんでいる。玄関のドアノブに手をかけたまま、しばらく動けずにいる。靴紐を結び直す。もう一度結び直す。

出発前の静寂

鍵を手に取る。金属の冷たさが指先に伝わる。ポケットに入れてから、また取り出して確認する。施錠の音が、明け方の空気に吸い込まれていく。

エレベーターのボタンを押す。降りてくる間、壁にもたれかかる。荷物の重さが肩に食い込む。ため息が白く見えるかと思ったが、そこまで寒くはない。ただ、体の芯が冷えているような感覚がある。

エレベーターが到着する。扉が開く音に、少し身構える。中に入って、行き先階のボタンを押す。動き出す瞬間、胃がふわりと浮く。その感覚に、これから始まる長い一日を思う。