路地の灯り
路地の灯りが黄味を帯び、瓦の壁と錆びた自転車をそっと照らす。石畳には水の跡はなく、影は細長くのびる。路地の奥で自動販売機が光をこぼし、風に揺れる植え込みの葉音だけが耳に残る。薄く開いた窓には室内の暖かい灯りが覗く。手袋をした手はポケットへと滑る。路地の小さな羽虫が灯りを巡るのを、静かに見守る。店先の看板が風に揺れ、文字の端が滲む。小さな葉が灯りの周りで輪を描く。
灯りの影を辿る
灯りの輪郭は路面のざらつきと呼吸を映す。自動販売機の青い灯が壁に短い影を走らせ、風に揺れるのれんの影と重なる。路地の奥に置かれたベンチが光を受けて木肌をくすませ、近くの車輪の音が静かに刻まれる。遠くの猫の尻尾が光の縁で一瞬浮かぶ。壁のひび割れには微かな冷たさがあり、光がその凹凸を強調する。路地の出口から風が一呼吸分だけ涼しく流れる。
初夏の風と記憶の灯り
灯りは別の季節の匂いも連れてくる。かつての帰路、雨の日に揺れた看板の下、子どもの声が遠く響いた。その記憶は今もこの灯りの近くで静かに息づく。今夜も街は小さな断片を拾い集め、あなたの足音と混ざる。この灯りの下で、あなたは何を感じるだろうか? すこしの距離を置いた目線で街を見つめると、同じ光でも別の色が見えるだろう。
