グラスの縁と夜の静けさ
五月の夜、リビングの灯りだけが灯る。ビールグラスを手に取ると、縁の冷たさが指先に伝わり、泡の立つ香りが鼻をくすぐる。机の上には新聞紙の端がわずかに折れ、冷えたグラスの縁がそこに静かな冷気を描く。窓の外には街灯が揺れ、夜風の気配が指先をかすめる。第一口を喉へ落とすと、静かな室内に微かな音が響く。床と窓の境界線が薄くなるころ、グラスをコースターへ置く音が木の床に落ちる。
縁の冷たさ
指先の熱とグラスの冷たさがひとつのリズムを作る。縁をなぞるたび、日常の雑多さが一旦遠ざかるように感じる。
寝室へと移るひと呼吸
グラスを端に寄せ、布団へ向かう短い動作。部屋の灯りを落とすと窓の外の街灯が影を揺らす。麦の香りが鼻先をくすぐり、眠りへと続く静かな時間をそっと引き寄せる。この小さな習慣、似た場面を思い出す人はいるだろうか。
