窓辺に届く緑の匂い
カーテンを少し開けると、青葉を揺らす風が部屋に入ってきた。五月の午後の空気は、まだ梅雨前の軽やかさを保っている。風に乗って運ばれてくるのは、湿った土の匂いと、どこか遠くで鳴いている鳥の声。
庭の楓が、去年よりも大きく枝を広げているのに気づく。新しい葉は陽の光を透かして、薄緑色に輝いていた。その葉陰で、小さな虫が忙しそうに動き回っている。
季節の境目に立つ
半袖でも過ごせる暖かさだが、日陰に入ると肌寒さも残る。そんな季節の境目は、いつも何か特別な気配を含んでいるような気がする。あなたの町では、どんな初夏の兆しが見えているだろうか。
耳を澄ませば、近所の子どもたちの遊ぶ声が聞こえてくる。学校から帰ってきたばかりなのだろう。その声に混じって、風鈴のかすかな音も届いた。まだ早いと思いながらも、誰かがもう夏の準備を始めているらしい。
光と影の戯れ
床に映る木漏れ日が、ゆらゆらと形を変えていく。その動きを眺めていると、時間の流れ方が少し変わるような感覚になる。窓の外では、燕が巣作りの材料を運んでいるのが見えた。
そろそろ麦茶の季節だろうか。台所に立つと、まだ緑茶の缶が半分以上残っているのに気づく。季節は確実に進んでいるのに、暮らしの中の小さなものたちは、まだ春のままでいる。その小さなずれが、なんだか愛おしい。
