玄関で靴ひもを結ぶ

玄関で靴ひもを結ぶ人の手元と靴

しゃがんだ目の高さ

今朝、玄関で靴を履こうとして、しゃがみ込んだ。曇りの朝は光が拡散して、タイルの表面まで均一に明るい。湿度が高いのか、空気がまとわりつくように重い。膝をつくと、床の冷たさがゆっくりと布地の向こうから伝わってきた。

靴ひもが少しほつれている。昨日、急いで結んだままだったのだろう。ほどいて結び直す。指先がひもの繊維をなぞる。表面のざらつきと、締めるときの抵抗感。何度も繰り返してきた動作なのに、今朝はなぜかぎこちない。

湿った空気の中

玄関の扉の隙間から、外の空気が忍び込んでいる。雨は降っていないのに、土と植物の匂いが濃い。もうすぐ五月も終わる。この季節特有の、何かが変わり始める前の重さがある。靴ひもを結び終えても、立ち上がらずに、もう一度だけ指で結び目を確かめた。

靴べらがすぐそばの傘立てに立てかけられている。それを一瞥してから、ようやく立ち上がった。ついさっきまで座っていた場所に、うっすらと体温の跡が残っている気がした。