浴室の灯りを押し上げる指
戸の前で止まって、少しだけ右手の指が湯気の匂いなど思い浮かんでは消えるような気配の中に入る。指先はスイッチの際に寄せられ、カチリという振動を浅く感じた。灯りは一つだけ、薄く白の光を滲ませて浴室内を包む。下から湯船の縁がかすかに映り、タオルかけの布の重みが揺れる。
白いタイルの小さな凸凹と光
目線が壁に向かうと、細かな凹凸の白いタイルが角の丸みを帯びていて、うっすら影が揺れた。灯りの中で水滴の痕がかすかに光を反射する場所がある。あの場所は何度も触れられたのだろうと頭の中で繰り返しながら、指先の使い方と重なって見えた。浴室の微かな湿度が空間を滑らかにしていて、手から腕に伝わる空気の感触は乱れなく冷ややかだ。
何かを置くため戻る手
スイッチを押した後、視線が浴室の入り口へ向く。そこで小さな黒のビニール袋が床に寄りかかるように立て掛けられていて、しばらく目が離せない。手はそっと戻り、壁沿いの洋服掛けに触れて、引き寄せるように袖口を整えた。動作はゆっくりで、途切れそうなリズムがまるで遠い場所の音を聴いているかのように感じられた。
