窓辺に腰をおろし、春の風が薄いカーテンを揺らす。陽の光はやわらかく室内へと広がり、床には細い影が長くのびている。外の木は新しい緑を浅く重ね、空気には湿り気と花の匂いが混ざっている。静かな日常の音だけが遠くから届く。
私は窓の外と内を結ぶ薄い境界をじっと眺める。光は壁の紙を染め、花瓶の水面をかすかに揺らす。風が吹くたび、葉の影が床を走り、部屋の静けさの中で小さな動きをつくる。光が今日の静けさを作っているのだと、ふと気づく。
手元の温度が少し上がっただけで、心の温度もゆっくり上がる。春の香りと木の葉の音が、過去の重さを少しだけ薄くしてくれる。過ごす時間の長さは変わらないのに、視界に入る光の形が変わるだけで、気持ちは静かに揺り動かされる。
窓の外は変わらず、室内の静かな空気は続く。穏やかな光は、今日という日を静かに整える。私はこの小さな光の流れを、そっと胸にしまい込む。
