夜風が運ぶ春の匂いと、インクに綴る静かな時間

夜の窓辺に置かれたノートと万年筆

春の夜風と、街角の白い花

春も深まり、夜の空気が随分とやわらかくなりました。少し遠回りをして帰る道すがら、街灯に照らされたハナミズキの白い花が、夜の闇にふわりと浮かび上がっているのに気がつきます。

闇に浮かぶ花の影

昼間の喧騒が嘘のように静まり返った通りでは、かすかに湿り気を帯びた土の香りと、どこからか漂う甘い花の匂いが混ざり合って、通り抜ける風に乗って運ばれてきます。足元に落ちる街路樹の影も、なんだかいつもより優しい輪郭をしているようです。

インクに溶かす夜の空気

部屋に戻り、まだ少し体に残るぬるい夜の空気を逃さないよう、窓を少しだけ開けたまま机に向かいます。万年筆のキャップを外し、まっさらなノートにペン先を滑らせると、今しがた見上げた夜空の色に似た、深いブルーのインクが紙に静かに染み込んでいきました。ほっと肩の力が抜ける、穏やかで満ち足りたひとときです。