山道の岩に腰を下ろして

霧に包まれた朝の山道にある苔むした岩

登山口から少し入ったところで、ちょうど腰かけやすい高さの岩を見つけた。表面は湿っていて、苔が指の腹にざらりと触れる。朝の空気は肌にまとわりつくように重く、シャツの袖が二の腕に貼りついている。

岩の上で体重を移すと、苔がわずかに潰れる感触がある。手のひらで岩肌を撫でると、昨夜の雨を吸った苔が、スポンジのように水分を含んでいるのがわかる。指先が冷たくなっていく。何度も同じ場所を撫でているうちに、苔の表面に小さな窪みができた。

土の匂いと霧

足元の土からは、腐葉土の匂いが立ち上っている。靴の先で落ち葉をそっと押すと、下から黒っぽい土が顔を出す。湿った土は、押した形のまましばらく残っている。

霧が木々の間を流れていく。杉の幹が、近いものははっきりと、遠いものはぼんやりと見える。霧の動きを目で追っていると、自分の呼吸が白く混じるのに気づく。息を止めてみる。霧だけが動いている。また息をする。白い息が霧に溶けていく。

岩の冷たさ

岩に座っている尻が冷えてきた。立ち上がろうとして、また座り直す。手のひらを岩に押し付けて、その冷たさを確かめる。岩の表面には細かい凹凸があって、強く押すと手のひらに跡がつく。

どこかで鳥が鳴いている。声は霧の向こうから聞こえてくるが、姿は見えない。耳を澄ますと、葉から落ちる水滴の音も聞こえる。ぽつり、ぽつりと不規則に。

もう一度立ち上がろうとして、今度は本当に腰を上げる。岩から離れた瞬間、尻のあたりがすうっと冷たくなる。振り返ると、座っていた場所だけ苔の色が濃くなっている。手で触ると、まだわずかに温かい。すぐにその温もりも消えていく。山の朝は、何もかもを元に戻していく。