沈黙を纏う歪な陶片

夜の机上に置かれたひび割れた白磁の陶片

微かな凹凸の軌跡

部屋の照明を落とすと、窓から差し込む外の光が机の一角を淡く縁取る。そこに置かれたのは、かつては何かの器であったはずの白磁の破片だ。縁は整えられておらず、指先を滑らせれば、乾燥した土の感触と鋭利な突起が神経を刺激する。亀裂が刻まれた表面は、指の腹がわずかな凹凸を拾うたびに、冷ややかな空気を伝えてくる。ひび割れは中心から端へと細い影を落とし、まるで何かの地図を広げているかのようだ。

指先が辿る亀裂

かつては円を描いていたであろうその陶片を、持ち上げてみる。指を掛ける位置を変えるたびに、重さの重心が掌の中で微かに揺れる。光の当たり具合によっては、釉薬が剥がれ落ちた部分が白く浮き上がり、表面に刻まれた微細な傷跡を強調する。爪先で縁を弾くと、金属的ではない、鈍い音が空間に溶け込んでいく。その振動は指先から腕へと伝わり、壁の向こう側から聞こえる静寂をより際立たせる。

冷えた磁器の沈黙

表面の滑らかさと、割れた断面の粗さ。その対比を確かめるように、私は何度も指を往復させる。この陶片にはもう名前も用途もない。ただそこにあるだけの質量が、私の呼吸と重なり合うように静かに佇んでいる。指を離し、再び机の上に戻すと、陶片は元の位置に収まり、夜の闇に深く沈んでいく。時計の針が刻む音だけが、部屋の空気をわずかに震わせている。