信号の赤に身を任せる
夕暮れの光はやわらかく、街角の信号は赤く染まっている。足元を見ると、細かなヒビの入ったアスファルトと、わずかに浮いた白線の端が見える。周囲はざわついているはずなのに、この瞬間の前屈みなりかけた身体は静かに固まっている。空気の湿度が肌にじわりと触れるのを感じながら、手のひらはポケットの縁にそっと触れ、無意識に指を動かしている。
足元で見つけた小さな存在
一台の自転車がそっと歩道に寄りかかっている。タイヤの表面は少し汚れ、小さな砂粒が付いている。風が弱く吹くと、薄く揺れる街路樹の枝がこすれ合い、かすかな音を立てる。目を上げて、信号の横の電線に留まる一羽の鳥が薄暗がりの中でじっとしていた。じっと向き合うと、都市の片隅のこうした小さな瞬間は、外へ目を向ける切っ掛けになる。
ぼんやりと過ぎる人波に混ざらず
背後を通り過ぎる靴音に、身体がすこしひるむ。人は途切れず歩いているのに、こちらの視線は無意識に足元や、信号の変わり目のその瞬間に留まったままだ。ひと呼吸置いて、また前を向くと、信号が青に変わる。腕時計も見なかったのに、あの微かな感覚が身体を動かしてくれる気がして、立ち止まることの余韻を抱えて歩き出した。
