信号待ちの微かな動き
歩道の隅に立ち止まった。まだ路面は乾ききらず、薄く湿ったアスファルトが午後の光を受けて鈍く光る。手元を見下ろすと、黒いスマートフォンの表面に、ぼんやりと隣の信号の緑色が映り混んでいる。指の先が手のひらにわずかな熱を残したまま、心もとなく指先をこすっていた。
ひと息つく街の断片
周囲を通り過ぎる人の足音がほどよく囁き、車のタイヤが雨上がりの路へさざなみを立てる。時折、小さな水たまりが見え、その向こうに半透明のビニール傘の縁がわずかに揺れた。傘の下の顔は見えないけれど、呼吸の気配が伝わるようで、そっとこちらの気配を探るように視線が交わる。
じっとりとした午後の湿り気のなかで
遠くの工事音が途切れて、やけに静かな瞬間が訪れる。空気の重さを感じながらも、身体の先端は信号の緑になるのを今か今かと待っている。息の間隔がいつもよりちいさく詰まり、腕の筋肉が微かに震えた。こうして何気なく過ぎていく時の一欠片が、からだの内側にそっと居場所をつくる。振り向くと、店先の小さな植木の葉先に雨露がまだ光っていた。
