受話器の重み

電話ボックスの受話器、雨の夕方

夕方の雨は、細かい粒が密度を増しながら降り続けている。街灯が点き始めた時刻、アスファルトは濡れて光を散らす。電話ボックスのガラス戸を引くと、内部の空気が少しひんやりとしていた。床のゴムマットには、濡れた靴の跡が点々と残っている。

受話器の冷たさ

受話器を取る。プラスチックの表面は、外気よりわずかに冷たい。指先に伝わる重さは、予想よりもしっかりとしている。イヤーキャップの小さな穴に、自分の呼吸が当たって曇る。コードは無造作にねじれて、フックのあたりで絡まっている。ボタンは一つ一つが四角く、数字の印字は所々かすれている。特に「0」の文字はほとんど消えかけていた。

トーンだけが続く

耳を当てると、低い唸りのようなダイヤルトーンが流れている。一定の周波数で、途切れる気配がない。電話をかける宛てもないのに、この音だけを聞いている。ガラスの向こうでは、雨が路面を叩くかすかな音が混ざる。街灯の黄色い光が、曇ったガラスを通してぼやけて見える。誰かが傘をたたんで通り過ぎる影が、一瞬だけ映った。受話器をゆっくりと元の位置に戻す。プラスチックがプラスチックに当たる、乾いた音がした。そのまま戸を押して、雨の中へ出た。傘を差しても、細かい霧のような雨が顔に当たる。足元の水たまりが、街灯を映している。