湖のほとりの湿った草
足元の湿った草が手首まで包み込み、細かな水滴が指の間に伝わる。風はそよとも吹かず、湖の水面は穏やかに揺れる。さざ波が岸辺の小石に当たり、リズムを刻むように静かな音が届く。それは遠い時間の欠片を探しているかのように揺らいでいた。周囲の樹木の葉先からは、ひとしずくの水がぽたりと落ち、薄暗くなってゆく空に吸い込まれた。
空気に溶ける静けさ
湿度の高さが肌にじっとりとまとわりつき、重く引き締まった夕暮れの空気が胸のあたりを押し包む。呼吸のたびに湿った空気が喉を通る感触が微かにざわめき、まるで湖面の揺れのように繰り返される。遠くで何かがかすかにこみ上げる。鳥の声はもう聞こえず、黙ったまま時間が動いているようだ。湖岸の湿土の匂いが脳裏に淡く染みこんで、動かない影に手足の感覚だけが反応していた。
水面の静かな揺らぎ
目の前の水面に散らばる光は、ひとときも同じ姿を見せない。手に届きそうで届かない、透き通る水の揺らぎを凝視すると、落ち着かない胸の奥で何かがうごき始める。ふと足を動かしかけてやめる。そのまま変わらずそこに立ち尽くすことでしか感じられないものがあった。手を伸ばしたくなるのをこらえるかのように、湖はただ静かに呼吸し続けていた。
