曇り空の下、磨かれる足裏

バスルームの床に置かれた足裏専用のブラシと水滴

足裏に触れる硬質な感触
窓の外では厚い雲が空を覆い、湿った気配が浴室まで漂ってくる。私は今、手に入れたばかりの足裏専用ブラシを手に取り、その感触を指先で確かめている。毛先は予想よりも硬く、しっかりと詰まっている。これを床に固定し、そっと足を乗せてみる。最初は恐る恐るだった体重の乗せ方も、徐々に慣れていき、ゴシゴシという摩擦音が耳の奥で響き始める。肌に伝わる刺激は思いのほか鋭く、鈍くなっていた神経が目覚めていくのがわかる。
磨くという行為の静けさ
この作業を繰り返していると、意識は足裏だけに集中する。昨夜から引きずっていた胸の奥の澱みが、足の裏の角質とともに少しずつ削り取られていくような錯覚を覚える。湿り気を帯びた空気の中で、ただひたすら自分の体と向き合う時間は、何物にも代えがたい。湯の熱気が肌を覆う中、ただ足の裏を磨くという単純な反復動作が、荒れた思考を少しずつ平らにならしていく。
日常の細部を見つめて
ブラシから足を離すと、皮膚が赤くヒリつく感覚が残る。この痛みは、自分が確かに今日を生きていたという確かな印のようだ。洗面所の鏡を避けるようにして、濡れた床に視線を落とす。水滴がタイルの目地に吸い込まれていくのを眺めながら、私は自分の足裏をじっくりと見つめた。そこには、言葉にできない重苦しさや未練を抱えたまま、それでも前へ踏み出そうとする皮膚の層が、確かに存在している。