夜のキッチンで炊飯器スイーツを試す

暗いキッチンで炊飯器のふたを開ける手元のアップ、湿気を含んだガラス窓越しの夜景

夜のキッチンの灯りは薄暗く、湿度の高い空気がじっとりと肩に重くのしかかる。炊飯器のふたを開ける手を、少しだけためらって止める。中から白く湯気がすっと立ち上り、時折小さな水滴が縁にたまっているのが見えた。やっぱり炊飯器スイーツは気軽にできるとはいえ、正直どんな仕上がりか確かめるまでは心臓が少し跳ねるものだ。

材料を混ぜてスイッチを入れてからの時間は、長く感じた。炊飯器のランプの丸い赤い光がカウンターに映り、視線が戻ってきてはまた逸らす。待っている間、子供の頃に母と焼いた蒸しパンのことがちらりと思い出された。指先がわずかに震え、何度か深く息を吐く。こんな些細なことで、まるで試験を受けるように気持ちが行ったり来たりするのを自分で知る。

やがてスイッチが切れ、ふたをあけると甘い香りがゆっくりと空間に広がった。布巾で火傷しそうな熱さの蓋の縁をそっと持ち、ひと呼吸整えてから中身をすくう。表面には蒸らしの水滴が残り、白っぽくしっとりしている。舌先で味を確かめてみると、素材のシンプルな甘さが前面に出て、どこかほっとする。味とは裏腹に、なぜか視線が一点で泳ぎ、もしかするとこれはまだ安心できていない自分の証かもしれないと思った。

すぐに片付けるつもりが、もう少しだけとスプーンを置き直す。湿った空気のせいか身体がいつもより重く感じるけれど、こうして無言の夜のキッチンにいるのがどこか心細くもあり、少しだけ守られている気配があった。そんな時間が終わればまた別の顔に戻れるのだろうか、とふと思いながら。