歩道の隅に置き去りの影
街の角にさしかかったところで、ふと足が止まった。アスファルトの割れ目に伸びる細い草の影と、近くのベンチ脇で乾いた紙切れが揺れている。静かな朝の光がゆったりと斜めに差し込み、影は長く伸びるが、風は限りなく穏やかだ。人の声もまだ遠く、通り過ぎる足音だけがやけに大きく感じられる。
忘れものに揺れる視線
歩道の端にひっそりと置かれた折りたたまれたハンカチがあった。誰かが急いで手放したのか、それとも気づかず通り過ぎたのか。手元で何かを確かめるようにふと立ち止まる。指先が無意識に撫でてしまいそうな、軽い躊躇が体の芯を巡る。通行人はそれを避けるようにゆっくりと足を運び、景色は乱れずまた静けさを取り戻した。
朝の空気にまぎれた独白
片手をポケットに入れたまま、視線は遠くの信号待ちのグループに浮かぶ淡い緑色のバッグへと移る。夏の湿度の中にひそかな冷たさが混じり、肌の表面を撫でる。それは穏やかな季節の中で、忘れかけていた何かをふと呼び覚ますような。呼吸がほんの少しだけ浅くなり、もう一度歩き出す準備をする背中に、小さな引っかかりがゆっくりと溶けていくのを感じた。
