誤送信の夜、静かな不安

暗い部屋でスマートフォンの画面を見つめる手元

部屋の明かりを落とし、窓を少し開ける。外からは湿った風が入り込んでくるだけで、気温は下がらない。スマートフォンの画面だけがぼんやりと手元を照らしている。

通知のタイミング

寝る前に何気なく開いたニュースアプリ。見出しに「710万件の識別情報を誤送信」とある。読み進めるうちに、日常の些細な操作が、誰かのミスで膨大な情報を流出させたという事実が浮かび上がる。

画面の中の数字

710万という数字を、頭の中で具体化しようとする。一万の塊が七百十個。駅の改札を一人ずつ通すとしたら、どれだけの時間がかかるだろう。その一つ一つが、どこかの誰かの識別情報だ。自分もゲームをしているから、その中に含まれている可能性がある。指が止まり、画面の明るさが目に沁みる。

カーテンの隙間から、雲の切れ間の星が見える。昼間の湿った空気は夜になっても澄みきらず、星の輪郭がぼやけている。ああいうところにも、自分が送ったはずのないデータの断片が漂っているのかもしれない。そんな馬鹿な考えが浮かんで、軽く頭を振る。

拡散する不安

窓辺に立ち、下の通りを見下ろす。街灯の明かりが濡れたアスファルトを照らし、人影はない。情報はこうやって、音もなく、痕跡もなく拡散していくのだろう。手にしたスマートフォンが、今は奇妙に重く感じられる。電源を切ってしまいたい衝動を抑え、そっとテーブルに置いた。