波紋を広げる雨粒
手の平に当たる雨粒はまだ冷たさを残し、連なって水面に落ちるたびにさざ波がひろがる。湖畔の緑はしっとりと濡れ、葉は水をはじかずにそのまま抱えるように垂れている。風は肌をさらいながら、木の枝をかすかに揺らすだけだ。視界のなかで揺らめく葉の影は水面に不規則な模様を投げ、迷い込んだ虫の羽音が染み込んだ静けさをいくぶんだけ揺らしている。
湿った空気と足元の感触
草地に置いた足が柔らかな湿り気を感じて、土は踏むたびにわずかに沈み込んだ。傘は家の軒下に置きっぱなしのまま、濡れた空気だけを肌で受け取る。通り過ぎる風の冷たさに誘われて、体が一度小さく縮こまった。音は雨と葉の擦れ合う音にのみ支配され、遠くの車の音もかき消されてしまう。
静かに刻まれる時間の断片
そこにいる自分の輪郭はぼやけながら、ひと筋の水滴が背中をつたい落ちるのがわかった。視線は湖の向こうの濃い緑にとどまり、同じ波紋がいくつも繰り返される様をぼんやりと追う。身体の軋みと息遣いの感覚がいつもより近くて、雨の日の静かな湖畔が時間を引き延ばすように感じた。
