夜の台所で甘いものを手にする指先

夜の台所で開いた冷蔵庫の光に照らされた手元

スマートフォンの画面に流れてきた記事の見出しが、指を止めさせた。甘いものへの執着も更年期の症状のひとつだという。画面から顔を上げると、台所の流しに重ねたままの皿が目に入る。

立ち上がって冷蔵庫に向かう。扉を開けると、奥の方にチョコレートの包み紙が見える。買い置きしたものだ。最近、こうして冷蔵庫を開ける回数が増えた。何か食べたいわけでもないのに、扉に手をかけている。

冷蔵庫の光に照らされた手

庫内の白い光が、取っ手を握る自分の手を照らす。指の関節が少し太くなったような気がする。いつからだろう。チョコレートに手を伸ばしかけて、途中で止める。包み紙のカサカサという音だけが聞こえる。

記事には、無理に我慢するよりも身体にいいものを選ぶことが書かれていた。でも今欲しいのは、身体にいいものではない。ただ甘いもの。舌の上でとろけるような、あの感覚。

窓の外の街灯

冷蔵庫を閉じて、窓際に立つ。外では街灯がぼんやりと道を照らしている。向かいのマンションの窓にも、いくつか明かりが灯っている。みんな何をしているのだろう。同じように冷蔵庫の前に立つ人もいるのかもしれない。

流しの皿を片付け始める。水音が静かな台所に響く。洗い終わった皿を拭きながら、さっきの記事のことを考える。症状という言葉が、妙に引っかかる。

皿を置く音

最後の一枚を棚にしまうとき、カチンと小さな音がした。その音で我に返る。結局チョコレートは食べなかった。でもきっと、また明日の夜も冷蔵庫の前に立つだろう。それでいいのかもしれない。あなたも、そんな夜があるだろうか。

台所の電気を消す。暗闇に目が慣れるまでの一瞬、ただじっと立っている。