曇り空の街角で
夕暮れの空は厚い曇りに覆われ、街はひと息ついたように静まり返る。足元に落ちた看板の影が、ふっと揺れる。風は弱く、建物の影を撫でるかのようにそっと通り抜けてゆく。夜へと滑り込む直前のこの時間は、いつもより微かな動きに敏感になる。
看板の細かな揺れに目をやる
角の小さな金属の看板は、さび色の縁を細く露出させながら、ゆらゆらと揺れている。軽い触れ合いのような振動は、街のざわめきに紛れて教えられない。けれど視線は何度も帰ってしまうその揺れに、身体の芯が少しだけ曇った空の重さに逆らうように反応している。
気づくことの隙間
ひと息つくために立ち止まった場所から、遠くでは人の気配が消え、新しい夜の匂いもまだ満ちていない。見過ごしがちな小さな影が、いくつもの日常の切れ端を連れてくる。背中に残るわずかな湿気を感じるたび、次の動きを整え直すようにゆっくりと息を吐く。
