いつもの朝に忍び込んだ異物
今朝はゆるやかに曇りがちで、陽ざしは窓の外をぼんやりと照らしている。わたしの視線はテレビの横にいる猫に向かっていた。息子が帰省してから、ずっと隠れがちだったその猫は、どういうわけか今朝、「ツチノコ」と呼ばれている。不思議な響きが寝ぼけた頭の奥に引っかかりながら、その眼差しだけに注意を向ける。
ずれた距離と佇まい
彼が帰省したことで、家の空気が微妙に変わったのだろうか。猫はいつもの場所にいながらも、普段とは違ってどこか落ち着きなくて、ふとした動きに緊張が感じられる。まるでその存在が家の中の物理的な距離とは別に、どこかよそよそしい空間の中にいるみたいだ。
朝の空気は湿り気が少し混じり、風は弱くカーテンを静かに揺らす。その微かなざわめきに合わせて猫のひげが動き、静かな時計の音が部屋の隅まで響き渡る。そんな環境で、息子の言葉が何度も頭をよぎる。おかしな名前をつけられたその子は、じっとこちらを見ているのに目が合わない。
日常のなかの小さな変化
ふと、テーブルの上に寄りかかっていた手が少し震えた。心が忙しく追いつかず、身体が言葉にならない不協和音を奏でていた。猫のあのぎこちなさは、きっとわたしの揺らぎも映しているのだろう。いつも通りに見えて、どこかズレている家族の関係。
時間の流れは緩慢なまま、まるで誰も動きたくないかのように。本を開く手のひらに残る温度に自分がいることを確かめながら、今日はこの朝のまま閉じ込めておきたくなった。隠れていた「ツチノコ」は、ただ静かにそこにいるだけで、ひとつの小さな世界を形成している。
