歩道の端、アスファルトとコンクリートの継ぎ目に、一株の草が生えていた。高さは十センチほど。細い茎に三枚の葉がついている。周囲は乾いた灰色で、ここだけ緑が浮かんでいる。日は西に傾き、光が低い角度から差し込んでいた。
斜めに伸びる影
葉の輪郭が逆光で明るく縁取られる。葉脈まで透けて見える。表面にはうっすらと埃がのっていて、光の加減でそれが白っぽく光る。影はコンクリートの上に長く延び、割れ目の線と重なっていた。風が吹くたびに影が歪み、元に戻る。しばらくその動きを追っていた。
風の通り道
ビルの谷間を抜ける風が、定期的に吹く。葉は一枚だけがやや大きく、風を受けるとしなる。茎は硬く、倒れることはない。根元の割れ目は幅二ミリほど。奥は暗くて見えない。どこから種が落ちたのか。雨の水が溜まるのか。周囲のアスファルトは熱を帯びているが、この裂け目だけは少しひんやりしている。
根の在処
指を伸ばして、葉の一枚に触れてみた。表面は少しざらついていた。茎の付け根には、細かい繊維が絡んでいる。この草が、コンクリートの下でどのように根を張っているのか想像する。硬い物質の隙間を縫うように伸びる根。酸素も水もわずかしかない場所で、それでも緑を保っている。陽がさらに傾き、影がより長くなった。立ち上がると、足元から草が視野の端に移動した。
