水面を叩く刻み
公園の片隅で、噴水の水音が一定の速さで繰り返されている。暗闇の中で白く泡立つ飛沫は、街灯の光を受けて時折鈍い銀色に輝き、またすぐに黒い水面へと吸い込まれていく。水の流れは厚みを持ち、石の縁を越えて静かに下へと落ちていく。その水流の重みは、指先で触れれば冷たさを伝えてくるだろうと予感させる。飛沫の弾ける音は、まるで誰かの足音のように一定で、途切れることがない。水面に浮かぶ小さな木の葉が、渦に巻かれてぐるりと円を描く様子を、ずっと眺めていた。
止まった文字盤
ポケットから出した銀色の時計は、その動きを完全に止めている。文字盤の細い針は、四時を少し過ぎた位置で重なり合ったまま動かない。風防のガラスには、噴水の光が反射してぼんやりと滲んでいる。指で縁をなぞると、冷え切った金属の質感が掌に吸い付く。リュウズを回してみるが、内部で重い歯車が噛み合う感覚は伝わってこない。ただ静かに、夜の空気だけが肌をかすめていく。周囲には誰もいない。水音の向こう側で、遠くを走る車の音が低く鳴り響いている。何も語りかけないまま、ただその冷たいモノの重みだけを意識の中に閉じ込めておく。もう一度、水面へ視線を戻すと、光の揺らぎは先ほどよりも少しだけ激しくなっているように見えた。
