視線の先に並ぶもの
窓の外では細かな雨が降り続いており、湿り気を帯びた空気が部屋の隅々まで行き渡っている。手元には、これから食べるはずの冷凍ラーメンがある。具材の入っていない、どこか簡素なそのパッケージをじっと見つめ続けていた。透明なフィルム越しに見える麺の塊は、まるで氷のように静かにそこに佇んでいる。かつては華やかな具材を求めていたはずなのに、いま目の前にあるのは潔いほどのシンプルさだ。この軽やかさが、今の自分にはどこか心地よいと感じる。
指先に触れる冷たさ
パッケージの表面には細かな結露が浮いていて、指でなぞると冷たい水滴がゆっくりと筋を描く。指先に伝わるその冷たさは、今日という午後の静けさとどこか似ている。この数年、あれこれと足し算ばかりを繰り返してきた気がする。部屋を見渡せば、持ちすぎたモノや言葉の残骸が散らばっている。だが、こうして削ぎ落とされたものだけを前にすると、呼吸がわずかに整うような錯覚に陥る。具材のない麺は、飾らないままの自分の姿を突きつけてくるようで、目を逸らすこともできない。雨音だけが小さく響くこの部屋で、ゆっくりと冷凍庫へ手を伸ばす。冷気に触れた瞬間、指先がピリリと引き締まる。明日になれば、この冷たさも溶けて形を変えるだろう。今はただ、この小さな塊が持つ静寂と向き合っていたい。そうして、昼下がりの時間は緩やかに過ぎていく。
