壁に沿う白い輪郭
窓の外は重たい雲に覆われ、刻々と光を失っている。キッチンに立つと、壁面に固定されたtowerのレジ袋ストッカーが、周囲の陰影の中に白く浮き上がって見える。この箱は、無機質な鉄の感触をその表面に宿している。指先で触れると、ひんやりとした冷たさが皮膚に伝わり、それが室内の湿り気を帯びた空気に馴染んでいることに気づく。表面の角は鋭すぎず、かといって丸すぎず、慎重に設計された直線が壁の平面と静かな調和を見せている。
指先が触れる収まり
クシャリと音を立てるビニールを、細い投入口から中へ滑り込ませる。押し込まれた素材は、内部の限られた空間で形を整えられ、再び取り出される時を待っている。指を押し込むたび、スチール製の本体が微かに壁と共鳴し、乾いた音を立てる。かつては引き出しの中に押し込まれ、重なり合って混沌としていた端切れのような存在が、今はこの箱の中で整然とした秩序を得ている。レジ袋という、本来は仮の役割を背負ったものが、この場所にあることで別の何かに変わったような錯覚を覚える。
手元の静寂
詰め込みすぎた袋の角が、投入口から少しだけ覗いている。その端をつまんで引き出す動作を繰り返す。抵抗感のない滑らかな出し入れは、繰り返すほどに指先に馴染んでいく。この単純な反復の中に、自分の内側にある澱のようなものが、少しずつ削ぎ落とされていくような感覚がある。部屋はすでに薄暮に包まれ、輪郭が曖昧になっていく中、白い箱だけが確かな存在感を持ってそこに留まっている。明日の雨を予感させる湿度の中で、この小さな整理の手順だけが、今は唯一の均衡を保っている。
