指先に残るドクダミの匂い

梅雨の曇り空の下、庭の隅にしゃがみ込んでドクダミを素手で抜いている男性の手元。湿った土と白い十字の花、コンクリートの隙間から伸びる緑の葉。

指先を染める強い匂い

梅雨の湿気を含んだ風が、首筋をなでていく。日が昇ってしばらく経った静かな朝、庭の隅にある古い石垣の前にしゃがみ込んでいた。昨日の雨の名残だろうか、土はまだしっとりと濡れていて、触れると指先が冷える。

コンクリートの隙間から勢いよく葉を広げているドクダミの群生。白い十字の花が、曇り空の下でぽつぽつと明るく浮かび上がっている。茎を一本、指先で挟み、ゆっくりと引き抜く。ちぎれた断面から、独特の青い匂いが一気に立ち上った。鼻の奥を突くような香りは、引きずっていた曖昧な思考を強引に引き戻す。

湿った土と白い十字の花

あなたは、庭の手入れをするときに手袋をはめるだろうか。私はいつも素手で作業をしてしまう。土の湿り気や茎の硬さを直接確かめたいからだ。もう一本、今度は根元深くを掴んで引き抜く。土が小さく爆ぜる手応えとともに、細い根が空気中にさらされた。

何枚かの葉が手の甲をかすめる。ザラザラとした質感と冷たさが皮膚に伝わってくる。指先の匂いはさらに濃くなり、簡単には落ちないほどに染みついている。何かを片付けたいとき、人はこうして目の前の小さなものを一つずつ取り除くことに没頭するのかもしれない。言葉にならないこだわりが、指先に集まっていく。

爪の中に残る緑の記憶

立ち上がると、軽く膝が鳴った。しゃがみ込んでいたせいで視界が一瞬揺れる。抜いたドクダミを脇に置き、手のひらを見つめた。爪の隙間に黒い土が薄く入り込み、指先は少し青く染まっている。

風が吹いて、木の葉がサラサラと音を立てる。雨は降っていないが、雲は低く垂れ込めたままだ。この匂いはしばらく消えない。自分の手から漂う強い香りを鼻に近づけ、確かめる。形のない何かを整理するように、私はもう一度ゆっくりと息を吸い込んだ。