細い風がはらう中庭の空気
曇りがちな午後の室内に、薄く差し込む明るさ。ふと机の上に載せた羽根のない扇風機が回り始める。羽根の回る音がなく、風が確かに指先に触れている。かすかな振動と温度の変化をほんのりと感じる。これまで手にしたハンディファンとは違う沈黙の使い心地だ。
ゆるやかな時間の中で揺れる手元
窓の外は梅雨に入る前の湿った空気が立ちこめ、室内は冷たすぎず自然な涼しさが居座る。この微妙な風量を調節しながら、いくつもの考えがすり抜けては戻ってくる。便利さというよりは、こんなにも静かに夏の始まりを迎える手段があることに、不意に興味が向いた。
羽根のない形状は見た目の違和感を超えて、体が慣れていくのを待つようでもある。日々の暮らしの中に、静かで小さな変化が落ち着きを連れてくる気配。それがふと手元にもたらした午後の余白だった。
