歩道の片隅に沈む存在
靴の片方が、歩道の端でひっそりと佇んでいた。まとまった人の往来が切れた瞬間、視線がそこにゆっくりと留まる。靴底の黄ばみと側面の擦り切れた跡が、誰かの時間を密かに語る。左足のそれは、もう伴侶の声を聞くことはなさそうだった。
薄曇りの夕暮れに溶け込む
曇り空に覆われた夕方の街角、湿気を帯びたアスファルトの粒子が靴の輪郭をぼんやりと包む。周囲の背の低い草が風に揺れるたび、靴の中にも微かな空気が流れ込んでいく気がした。傍を往く誰かの急ぎ足が、瞬間的に靴の存在を損なう。
気づかれぬままの静寂
その靴は、たぶん誰かが急に脱ぎ捨てたか、意図せず離れてしまったのか。通りすがりの人の視界に度々入るはずなのに、目をそらすように足は前を向く。足元に落ちたそれは日の光の温もりを知らず、淡い影の中で静かに時を刻んでいた。
