薄明かりの流れ
冷たい空気はまだ届かず、窓辺には夏の夜の湿り気がひっそりと忍び込む。机の上に置かれた小さなランプが、淡く揺れる影を壁に落としている。指先で触れる灯りは、遠くの音をかき消し、カタカタとキーボードの微かな音が耳の奥に残るだけだ。
響く小さな音
床に置いた本の背表紙を撫でる指の動き。ページをめくる音がゆっくりと夜の静寂を切り裂く。わずかに開けた窓の隙間から、向かいの家のテレビのわずかなざわめきと洗濯機の低いうなり声が紛れ込む。何かを探すかのように、空のコップを手に持ち替え、ひと息つく。
身体の輪郭をなぞる
座ったままの身体に、少しずつ荷重がかかり、時間の重みがじんわりと伝わってくる。足先の感触に意識が向き、床の冷たさに触れる。背もたれに背中がもたれると、ひと呼吸の間だけ、言葉にならない何かが溶けていく気配を感じた。窓の外では風鈴の音もなく、ただ静かな夏の夜が続く。
