寝室の灯りをつける手の動き
玄関から運んだ鞄を廊下の隅にそっと置き、静かに寝室のドアを開ける。指先でスイッチを押すと、まぶしいほどでなく、けれどすぐに周囲を把握できるやわらかな灯りが部屋を満たし始める。灯りに浮かび上がった布団のしわや枕の膨らみが目にとまる。
窓越しに耳を澄ます
開け放った窓からは、湿気を含んだ夜の空気がゆるやかに流れ込む。ごくごくわずかに聞こえる遠い車の音と、街灯のぼんやりした光が揺らめく。窓枠にかけられたカーテンの布地も、静かにひらひらと風に唇を触れられるように反応している。
足元の床材は年月で擦れて、冷えた手をわずかに受け止めるような冷たさ。近くの棚には読了したままの本の背表紙が整然と並び、埋もれたメモ帳が一冊、目を逸らせぬ存在感を示している。
深夜の呼吸に合わせて、部屋の細かな気配にいつの間にか視線が流れていく。畳より少し硬い感触の床に足を下ろし、交換したばかりの枕カバーの綿の微かなざらつきを確かめるようにさする。灯りのなか、時間が静止したかのように、身体の緊張が緩み始める。
