ゆっくりと手を伸ばす
夜の寝室。布団の端に触れながら、そっと手を伸ばす。手のひらが壁のスイッチの冷たさを確かめるように感じてから、静かに押す。灯りが薄暗い室内にじんわりと広がる。ライトの黄みがかった光が壁の隅にある本棚の影を揺らし、細く積まれた文庫本の背表紙が穏やかに浮かび上がる。
見慣れた家具の輪郭
明かりに照らされたタンスの角がほんの少し輝き、引き出しのわずかな隙間からのぞく柔らかなシワのある衣服が視界に入る。枕元のテーブルには使い込まれたメガネケース、小さな懐中電灯が寄り添うように置かれている。床には薄い絨毯が敷かれ、靴下のかかとが控えめにその輪郭を曖昧にする。
灯りの中の寡黙な時間
スイッチを押してからの数秒間の静けさに腕の力がじんわりと抜けてゆく。光が十分に行き渡るまで、手の甲に灯りの温度が伝わり、いつのまにか体の緊張が和らいでいる。壁にかかった時計の針が静かに動いているのが見える。何かに気を取られているようで、胸の辺りが小さく揺れているのを感じながら、灯りが夜の空間をやさしく包むまで、目は部屋の隅々をぼんやりと見つめている。
