洗面台の冷たさと音
夜になってから、水が流れる洗面台のステンレスが無機質に光を受けている。手のひらに伝わる水の感触がひんやりとしていて、冷たさが予想以上に鋭く、身体の細かな震えまでも誘いだす。水音は普段聞き慣れているはずなのに、今日の空気のなかでぽつんと奇妙に響く。
鏡に映る視線と揺らぎ
正面の鏡にぼんやりと重なる自分の輪郭が奥行きを持たない平たいものに思えて、視線がそっと湿気の角へと向く。鏡のふちに溜まったわずかな水滴が、風がないのに光に揺れているように見えて、凝視するうちに頭のなかで時間が微妙にずれる。
立ち止まる手と沈む気配
洗い終わった手をゆっくりと拭く布の繊維が、湿り気によって重くなり硬さを増し、指先に小さな抵抗を感じさせた。ふと手を止めて、狭い空間の静寂に身を委ねる。どこかで通り過ぎたほんのわずかな音に反応して、身体が反射するその瞬間が消えるまで、目線は動かずゆっくりと息を整える。
