引き出しの奥から取り出す薄い編み目
曇り空から届く平坦な光が、畳んだままの衣服を白っぽく照らしている。五月も終わりに近づき、昼下がりの部屋の中は、動くと少し肌が汗ばむような絶妙な温度に満ちていた。クローゼットの整理を始めようと、床にしゃがみこみ、引き出しを一段ずつ引いていく。木の擦れる音が静かに響いた。
奥から出てきたのは、去年のこの時期によく着ていた、目の粗いサマーセーターだった。手に取ると、驚くほど軽い。綿の乾いた手触りが指先に残る。ハンガーにかけて鏡の前に並べてみるものの、ガラスに映る自分と、その衣服の間には、いつの間にか小さな距離が生まれている気がして、すぐに手を下ろした。一年という時間は、気づかないうちに体型や、肌の質感にわずかな変化を落としていく。
新しく馴染むものを求めて
手持ちの衣服を眺めながら、最近見かけたサマーセーターのニュースを思い出す。手頃な価格で手に入るカーディガンが、二の腕を程よく覆ってくれると評判なのだという。あなたも、二の腕のラインが気になって薄着を躊躇した経験はないだろうか。それをボタンを留めて一枚で、サマーセーターのように着こなす人が増えているらしい。
首元から二の腕にかけてのラインを気にするのは、自分だけではないのかもしれない。鏡に映る自分の肩を、そっと手のひらで包んでみる。少し冷えた指先が、肌の熱を吸い上げていく。新しく手に入れる衣服は、今の少し停滞している自分を、そっと肯定してくれるだろうか。まだ少し迷いながら、手元の古いセーターの袖をもう一度、優しく引っ張って形を整えた。
曇り空に馴染む色
窓の外を見上げると、厚い雲がゆっくりと動いている。雨の気配はないけれど、強い日差しを遮るこの光は、部屋にある色褪せたものをそのまま見せてくれる。机の上に置いたスマートフォンの画面を指先でなぞり、新しく出たサマーセーターの落ち着いた色合いを眺める。
手頃な一着を買いに近くの店舗へ出かけるべきか、それとも今日はこのまま、古い衣服の整理を続けるべきか。答えを出さないまま、窓から入る静かな風を吸い込んだ。
