バス停の屋根のした

夕方のバス停の屋根とアスファルトの水たまり

湿ったアスファルト

夕方のバス停は、思ったより人の気配が少ない。屋根の影がアスファルトにのびて、その境目をぼんやりと眺めていた。昨日の小雨が残した湿り気が、まだ路面にうっすらと息づいている。靴の先で、小さな水たまりをそっと押してみる。水の表面がぐにゃりと動いて、曇り空を映したまま、また静まる。ああ、あなたもこういうこと、やったことがあるかもしれない。子どもの頃から変わらない、意味のない仕草だ。

風と葉

風が吹くと、背後にある街路樹の葉がざわついた。音が先に届いて、それから冷えた空気が肌を撫でていく。湿度が高いせいか、風は重く感じられる。ふと顔を上げると、向かい側の商店のシャッターが半分ほど閉まりかけていた。夕方の時間が、ゆっくりと夜に向かって動いているのがわかる。

待つことの輪郭

バス停のベンチに腰掛けている人が、足元のバッグを整えている。その人の手の動きが、どこか疲れたようにゆっくりとしていた。私も同じように、気づけばため息をひとつ、押し出すようにして出していた。ふと見ると、ベンチの端に、小さな葉っぱが落ちている。どこから飛ばされてきたのか、形はきれいなままだった。手に取ってみる。表面はひんやりと湿っていて、指に土の匂いがうつった。空を見上げる。雲の切れ間から、わずかに青い色が見えていた。もうすぐ暗くなる。夜になると、また冷え込むかもしれない。

時刻表のガラス面に、拭き跡が幾重にも残っている。誰かの指のあとが、丸く広がっていた。それを見て、同じように指を伸ばしてみる。ガラスは冷たく、つるりとしている。遠くからエンジン音が近づいてくる。けれども、それは私の待つバスではなかった。音が通り過ぎていき、また静けさが戻る。バス停の屋根の下だけ、空気が沈んでいるようだった。