冷蔵庫の隅で

真っ黒なバナナの皮をむく手元

むく前

曇り空の昼下がり、何となく冷蔵庫を開ける。奥の野菜入れに、黒くなったバナナが一本横たわっていた。買ってから十日近く経つ。皮は黒く縮み、細かいしわが寄っている。触ると冷たく、弾力を失っている。なぜかそのまま閉める気になれず、取り出してまな板の上に置く。

窓の外の光は弱く、バナナの輪郭をぼんやりと浮かび上がらせる。指で皮をなぞると、ざらついた表面がかすかに指紋に引っかかる。時間が過ぎた証拠だ。

むいた後

包丁で先端を切り落とす。中の果肉は驚くほど白い。腐敗の兆候はなく、甘い匂いがほのかに立つ。親指を皮に差し込み、一気に剥く。黒い皮の内側は、まだ薄いクリーム色を保っていた。つるっとむけた果肉は、傷一つなく滑らかだ。

むき終えたバナナをしばらく見つめる。食べる気がしない。台所の窓の外は依然として曇ったままだ。ラップをかけて冷蔵庫に戻す。指先に残った感触の名残を、無意識になぞっていた。何かを待っているような、それとも諦めているような、中途半端な昼下がりだった。