開け放った窓から流れ込んでくる風が、部屋の静けさをそっと揺らしていく。机の上に置いた万年筆が、かすかに震える紙面に小さな影を落としている。
初夏の夜に漂う香り
この風には、昼間の陽射しを浴びて育った葉の香りが混じっている。青々とした新緑特有の、みずみずしさと若さが同居した匂いだ。あなたも感じたことはないだろうか、季節が一歩進んだ瞬間を教えてくれる、そんな自然からの便りを。
街の向こうでは電車の音が遠く響き、夜の帳の中でも緑は静かに呼吸を続けている。窓辺で受け取るこの贈り物は、忙しい日々の中では見過ごしてしまいがちな、けれど確かに存在している季節の歩みそのものなのかもしれない。
風が運んでくる香りに包まれながら、今という時間の豊かさをゆっくりと味わっている。
