机の端に置いた温度計が、この時期らしからぬ数字を示している。五月の陽だまりが頬を優しく包み込むものの、どこか夏の気配を孕んでいる。
開いたままのノートに万年筆でメモを取りながら、ふと手を止める。窓の向こうでは新緑が輝き、燕が忙しく飛び交っている。美しい季節のはずなのに、心のどこかで夏への不安がざわめいている。
季節の歩みに寄り添う
あなたも感じているだろうか、この早すぎる暖かさを。けれど自然は私たちの心配など知らぬ顔で、着実に歩みを進めている。窓辺の鉢植えが放つかすかな青い香りに、今この瞬間の美しさを思い出す。
万年筆のペン先が紙に触れる音が、静かな午前に響く。季節は移ろうものだから、その流れに身を委ねてみようと思う。今日という日を大切にしながら。
